良い葬儀社選びは、故人との最後のお別れを最悪な形にしないためにも重要ですが、どのような葬儀社が実際に良い葬儀社なのかわかりにくいものです。
例えば病院で死亡したとしても、病院に紹介された葬儀社の態度や相性が悪く不満に思うこともありますので、葬儀社を選ぶことは後の葬儀トラブルを避けるためにも重要です。
ここでは葬儀社との契約前までに良い葬儀社か悪い葬儀社か見極める判断材料などを五種類紹介します。
01 服装や礼儀態度が良い葬儀社は、良い。
良い葬儀社とダメな葬儀社の二社の見積もりを取ったことがある、このブログの管理人(喪燈弥)の体験談を紹介するのが一番わかりやすいと思うので、ちょっと長くなりますが書いてみます。
身嗜みの悪い葬儀社は態度も悪かった
ある年の春に母が病院で他界し、病院に紹介された葬儀社に、深夜に自宅までの遺体の搬送を依頼(熟練先輩社員と歳が若めの社員の二名)し、改めて昼に葬儀の打合せをした時の話です。
長男なので喪主となった私が中心に葬儀の打ち合わせをすることになったのですが、60手前と死ぬにはまだ若い母が他界して半日程しか経っていないので、私も私以外の遺族も憔悴していました。
何で?ヨレたシャツと無精髭
遺体搬送時の二人の身嗜み(みだしなみ)は普通でしたが、昼前に改めて葬儀の見積もりに来た時の後輩社員の服装は普通だったのに対して、先輩社員はスーツではありますが無精髭にヨレヨレのシャツ。
恐らく遺体搬送後に葬儀社に戻り、自宅で3時間程眠ってから管理人の自宅に来たであろうということを考えれば、先輩社員の服装などは許せる範囲だと思うようにしました。
態度が大きすぎませんか
葬儀の打ち合わせは母の遺体が安置されている和室で行ったのですが、部屋に入るなりいきなり胡坐で座り葬儀の話を始める強引な先輩社員と、その後ろで正座をする後輩社員が対照的でした。
先輩社員は私たちが憔悴していることに付けこんでいるようで、かなり大きな態度とやたら上から目線の口調で一方的に葬儀の話をし、手書きの見積もりを作り始めたのです。
葬儀の見積もり三行だけ
振り返ると葬儀の打ち合わせ内容は酷いもので
1.過去の施行例の写真を見せない
2.通夜精進落としの飲食物の見本写真も無い
3.「葬儀一式〇〇万円」「飲食品費〇〇万円」「合計金額〇〇〇万円」と縦に三行だけ書かれた手書きの、いかにもボッタクリな見積書を渡された(葬儀内容の詳細が書かれていない)
4.明後日に火葬場が取れるので急いで契約して欲しいと、契約を迫る
5.打ち合わせ(葬儀の話し合い)と言うより一方的で中身の無い押し売りの時間30分
今考えてみたら、やってはいけない葬儀の見積もりベスト5を全部網羅した、ある意味完璧な葬儀の見積もり作業。と言うよりも、強引な商談でした。
酷い葬儀社は退場してもらった
これだけ酷い見積もりをされているのに憔悴していた喪主(管理人)は、この葬儀社に葬儀を任せなければいけないのだと思い込んでしまい、危うく契約するところだったのです。
このとき、親の訃報を聞いて駆けつけてくれて、この葬儀の見積もり過程を見ていた叔母に別室に呼び出され「この業者は怪しいから止めた方が良い」と言われなければ、契約していたと思います。
態度が悪い葬儀社には搬送費用だけを支払い、他の葬儀社に任せる旨を伝えて帰ってもらおうとしたところゴネられましたが、なんとか帰ってもらえました。(後輩社員は終始ほぼ無言)
黙祷してくれた葬儀社
急いで自宅から一番近い葬儀社に電話したところ、葬儀社の社長(ちょっと年配)が来てくれました。いきなり社長が来るなんて、先程の葬儀社のように酷い営業はして欲しくないなぁと思ってしまいます。
その社長は全く皴の無い3ピースのスーツをかっちり着込み、親が安置されている和室に通すとすぐさま枕元に正座し、両手を合わせて約一分間黙祷してくれました。
一社目:無精髭・ヨレたスーツ・いきなり商談
二社目:かっちりスーツ・いきなり正座・一分の黙祷
まともな葬儀社さんが来てくれた~!と、凄く安心して嬉しくなったのを覚えています。
理想的な葬儀の見積もり
近くの葬儀社の見積もりは、一言で言えば充実していました。
1.過去の葬儀施行例画像がわかりやすい
2.通夜精進落としの食事見本画像も豊富
3.親が無宗教なので、無宗教形式の葬儀で花祭壇にし、予算に合わせて祭壇の幅を狭くするなど細かい打ち合わせができ、手書きではあるが見積もりは10行程になった
4.明後日の火葬場は六枠あるうちの最後の枠が取れるが、予約しても良いか喪主遺族に確認する
5.生まれて初めての葬儀で分からないことだらけで質問が多くなり、二時間弱の見積もり・打ち合わせの時間だったが満足
という、理想的な葬儀の見積もりベスト5を全部消化した、ほぼ完璧な葬儀の打ち合わせでした。
母の葬儀は、参列した叔母や母の友人が「私の時もこんな感じのお葬式にしたい」と感想を言ってくれるようなとても良い式になり、この葬儀社には7年後父の葬儀で再度お世話になりました。
良い葬儀社は服装や礼儀態度が良い
たまたま極端な温度差のある葬儀社二社から見積もりを取った経験から言えることは、、服装と「死者と生者」に対する態度を見れば、ある程度葬儀社を判断する材料になるということです。
例え服装が良くても、故人に手を合わさず営業成績目的の商談をするような人物に、故人を偲び大金が動く葬儀を任せたくないですよね。
02 明確な説明・豊富な資料・経験と知識
経験に裏付けられた知識とわかりやすい説明、過去に施行した葬儀の画像などがあると、葬儀社に対する安心感が増します。
専門用語をあまり使わない
管理人の経験談の最初の葬儀社を「ダメ葬儀社」として、二社目の葬儀社を「善良葬儀社」とすると、ダメ葬儀社は専門用語を連発していた印象があります。
専門用語を多用して葬儀のプロを自認しているのかもしれませんが、ただマニュアルをそのまま復唱している心無い話し方で、葬儀のお手伝いをするという親切感が感じられないのは嫌ですよね。
対して、専門用語をあまり使わないか、使ったとしてもしっかり専門用語の説明をして、喪主遺族の理解度を考慮しながら話をする葬儀社なら信頼もできるというものです。
過去の葬儀施行例画像が豊富
例えば、二段飾り生花祭壇で、下段幅180cm・上段120cmと下段幅200cm・上段150cmどちらにしますか。と言われても花祭壇の写真が無ければ何の想像も付きませんので画像が必要です。
ただ単に祭壇の見本写真があればいいというものではなく、使う会場の大きさと祭壇の大きさなどの関係が分かるような、葬儀社が実際に施行した過去の葬儀例の画像もあればさらに納得です。
疑問に真摯に答えてくれる
葬儀パッケージ料金の他に追加料金はないのか、葬儀開催予定地の宗教費用の相場はどのくらいか、葬儀プランに含まれている式場使用料を超える斎場を選んだ場合の葬儀総額はどのくらいか。
など、疑問は尽きないと思います。
管理人の体験では、ダメ葬儀社は極力質問させないで、営業成績達成のためにさっさと数字(高めの葬儀費用)を作ろうとしていたように思えます。
善良葬儀社は、どんな質問にも丁寧に答えてまずは喪主遺族に安心してもらおう、というような気概を感じました。
経験と知識が豊富
余談ですが、予算が少ないので小さめの花祭壇すると言ったところ「供花を祭壇の両脇に寄せれば見栄えが良くなりますから」と助言してくれて、頼れる葬儀屋さんだな、と感じました。
「この担当者に任せても良いのだろうか」とか「この葬儀社にお願いしていいのか」と思ってしまう不安を、経験に裏付けられた知識で取り除くことができるのが良い葬儀社なのだと思います。
03 希望に応じた提案をしてくれる
葬儀の打ち合わせをしているうちに故人を想えばこそ出てくる希望や、予算に限度があるからこそどうしても出てきてしまう制約と言う要望も出てきます。
しっかり話を聞いてくれる
ダメ葬儀社の先輩社員は、変な方向に仕事慣れをしてしまい営業成績達成に集中しすぎたのでしょう、こちらが強めに質問するまで完全に物売り営業していました。
自身の職業がどのような状況の人に対するものなのか理解が足りなかったのもあるのだと思います。
一方で善良葬儀社は、花祭壇の花の色を母が好きだった色に合わせることや、無宗教形式なので読経がない代わりに母が好きだった曲を会場に流すことなど、様々な希望に応えてくれました。
選択肢を示してくれる
良悪の葬儀社と葬儀の打ち合わせをして思うことは
1.話を聞いて
2.選択肢を示し
3.提案する
という葬儀社(担当者)なら信用できます。
ですが、喪主遺族の話を聞かずに、やたら事務的に提案(会社のマニュアル通り進めてます!な感じ)は、憔悴している遺族にとってはあまり良くないと言えるでしょう。
低予算でも態度を変えない
葬儀社が所有する斎場や式場を使わず、使用料が数千円で済む公民館で葬儀をしたいと言うと、それまで穏やかだった葬儀社の態度が豹変して感じが悪くなったり強引な反対をすることもあります。
やむを得ない低予算葬儀に理解を示さない葬儀社は最初から縁が無かったとして諦めて、次の葬儀社に相談することも、良い葬儀社選びの近道と言えます。
これも管理人の体験談があります
母が他界してから7年後に父が他界したときも、母の時の葬儀社にお願いしたのですが、無宗教形式一般葬でとにかく必要最低限の安価でお願いしたところ、全く嫌な顔をせずに引き受けてくれました。
父の場合は母の時より金を掛けないことに遺族全員が最初から同意していたので、予算が低すぎて葬儀社に迷惑をかけたかも、と恐縮していましたが、葬儀社の真摯な姿勢に頭が下がる思いでした。
父のときも(安価ながら)良い葬儀ができました。
04 詳細な見積書の作成ができる
良い葬儀社の見積もりは詳細で項目ごとに明確に分類されている見積もりを出すことができ、見積書と葬儀後の請求書の金額に違いがある場合などの説明もしっかりしてくれます。
項目と料金が明確
管理人が体験したダメ葬儀社のように
葬儀一式〇〇〇万円
飲食品費 〇〇万円
———————
合計金額〇〇〇万円
こんな三行だけの見積書を出されたら即断りましょう。
例えば家族葬の見積もりを依頼した場合(例)
家族葬プラン
車両費用
搬送車
霊柩車
安置費用
ドライアイス
斎場使用料
式場利用料
遺族控室使用料
火葬場使用料
飲食費
通夜振舞い料理
精進落とし料理
返礼品費用
会葬返礼品
香典返し
———————
見積もり総合計金額
このような感じの見積書を出せるのが良い葬儀社です。
見積もりと請求書の金額が合わない場合もある
家族葬や一日葬などで喪主遺族側が参列者を選んで招待した場合は飲食返礼品費の増減はほぼ無いので、見積もり通りの請求金額になるかもしれません。
ですが、一般葬や一日葬でも故人の広い交友関係なども招待した場合は、予想より参列者が増えると料理の追加注文や返礼品などが増えるので、見積額よりも請求額が多くなることは避けられません。
追加料金不要と極端な値引きは注意
葬儀社の葬儀パッケージプランに「追加料金不要」と書いてある場合でも、実際はどのような料金追加の条件があるかわかりません。見積もり時に追加料金になる条件を必ず確認しましょう。
最初に提示する金額が極端に安い場合も注意です、多数の別途料金を付けて見積金額の数倍の請求金額になることもあります。
また「定価の〇割引」と言う場合は、値引き前の金額を極端に高く設定している可能性があります。
(体験談)ダメ葬儀社から二割引きの電話
実は、先に書いたダメ葬儀社を追い出してから三時間後に、ほぼ無言だった後輩社員から「先輩社員の態度が悪くて大変申し訳ありませんでした。」と電話がありました。
謝罪は受け取ったので電話を切ろうとしたところ「系列の葬儀社に先程の見積もりの二割引きで葬儀を受けさせるよう調整したのでいかかですか、今なら明後日の火葬場の予約に間に合います。」
と言われました。
最初の見積もりはボッタクリ
つまり先輩社員の三行見積もりはどんぶり勘定のボッタクリだったと、後輩社員が告白してくれたようなものです。しかも二割引きした金額が善良葬儀社よりもほんの少し高いので、違う意味で驚きです。
さらに言えば明後日の火葬場の予約は満杯のはずです。
後輩社員さんの誠意みたいなものは感じたので、既に近所の葬儀社と契約が済んでいると丁寧に伝えて電話を切りましたが、ダメ葬儀社は最後までダメダメでした。
ダメ葬儀社は悪辣だった
ダメ葬儀社は人の不幸につけこんだボッタクリを平気でする上に、旗色が悪くなったら値引きして他の葬儀社に丸投げするという悪辣な手法も学ばせてもらいました。
喪主遺族が憔悴して判断力が落ちているときに意味不明な価格設定で迫ってくると思います。多分「憔悴に乗じて高く販売できれば儲けられる」という感じなのでしょう、注意してください。
ダメ葬儀社の話が長くなりましたが、しっかりした葬儀社もたくさんあると思うので、葬儀の相談をするときにはちゃんと説明をしてくれて、詳細な見積もりを出せる会社を選んでください。
05 契約を急がせない(重要)
見積もりが終了した後、喪主遺族が契約をするかどうか考える時間を与えてくれるのであれば良い葬儀社、変な理由を付けて契約を急かすのであればダメ葬儀社と言えます。
よくある契約を迫る変な理由
「今契約すれば明後日の火葬場が予約できます」→そもそも急いで葬儀をしなければならないという慣習も法律も無いのだから火葬が伸びたところでたいした影響はないです。
「今すぐ契約すれば割引適用可能」→見積金額がボッタクリ価格と公言しているようなものなので、こんな業者は不要です。
他社との比較を嫌がらないのは良い葬儀社
良い葬儀社は考える時間を与えてくれますが、さらに他の葬儀社との比較も嫌がらないのであれば、凄く良い葬儀社と言えるでしょう。
複数の葬儀社を比較検討する余地を与えず、変な理由を付けてまで契約を強引に迫るのであれば強迫に近いようなものですので、そのような葬儀社は信頼できません。断りましょう。
そもそも葬儀社を比較する理由は、金銭的にも内容的にも納得できて後悔の無い葬儀を行うためなので、比較する時間を与えてくれる葬儀社こそ、喪主遺族の身になってくれる良い葬儀社なのです。
葬儀の内容を決めておくと良い
葬儀社にも専門分野や得手不得手などがあり、例えば少人数の家族葬専門の葬儀業者大人数の一般葬を依頼しても良い葬儀にならないかもしれません。
葬儀社を選ぶに当たって、先に、大まかとか簡単で構わないので葬儀の方向性などを固めておきましょう。
参列者の人数
参列者の人数によって葬儀の予算、葬儀種類や規模、内容、葬儀を行える斎場や式場も変わりますので、参列者の人数はある程度把握が必要です。
葬儀の予算
葬儀費用は葬儀の種類や参列者の人数、宗教費用の有無、飲食返礼品費用などによって全く異なります。まずは葬儀全体の予算を決めておきましょう。
葬儀の種別
葬儀の種別も把握しておくと葬儀社との話が円滑になります。
一般葬:遺族親族、故人の友人・趣味仲間、仕事の関係者や近所の方々など、大人数が参列する一般的な葬儀。
家族葬:喪主遺族が参列者を親族や故人と特に親しかった人から選び、少人数でゆっくりとお別れをする葬儀。
一日葬:通夜を行わないので、葬儀・告別式と火葬が一日だけで終了できる葬儀。
音楽葬:宗教者を呼ばずに行う無宗教形式で、読経の代わりにクラシック音楽の生演奏などで故人を偲ぶ葬儀。
火葬式(直葬):通夜・葬儀・告別式は行わないので葬儀ではない。火葬のみを行って終了。
このような違いがあります。
宗旨宗派など
宗教者を招く葬儀の大半は仏式なのですが、宗派によって異なる葬儀の形式に対応できる葬儀社を選ぶことが重要です。
菩提寺がある場合は、先に菩提寺に葬儀の相談をする必要があります。
葬儀の場所や地域
居住地域、葬儀を希望している場所や地域に対応できない場合もあるので、必ず確認しましょう。葬儀社の規模によっては、
葬儀を行う斎場は、故人の自宅近辺、遺族の居住地、駅から至便、駐車場が広いなど、ある程度の条件を考えておきましょう。
以上の五種類がある程度決まっていると葬儀社選びが楽になりますが、かっちり五項目が決まっている必要はありませんし、わからない部分は葬儀社と相談しながら決めても構いません。
良い葬儀社まとめ
良い葬儀社を一言で表すのは難しいですが
・服装がしっかりしていて、生者と死者にも礼儀がある。
・明確な説明ができ、豊富な資料を持っていて、経験に裏付けられた知識で喪主遺族を安心させてくれる。
・しっかり話を聞いて、低予算でも態度を変えず、選択肢を与えた上で決定権は喪主遺族に与える。
・各項目毎に細かい金額が入った見積もりを作成できる。
・他社との比較を嫌がらず契約を急がせない、迫らない。
このようなことが言えます。
葬儀業者の方向性や得手不得手もあるので、どのような葬儀にしたいのか、参列者の人数、予算、葬儀の種別、宗旨宗派、葬儀をする場所などもある程度決めておくと相性の良い葬儀社を選べるでしょう。
良い葬儀社を選んで、金銭的にも葬儀内容的にも納得できて後悔の無い、良き葬儀を挙げましょう。