自由葬とはどのような葬儀なのか?費用や流れ、メリットデメリットを解説

自由葬は宗教無しで自由に内容を演出できる葬儀です

自由葬は無宗教葬とも言われる、宗教者を呼ばずに自由な形式と内容で行う葬儀で、宗教者は呼ばずとも装飾や進行に宗教色のある内容から、祭壇や装飾・進行に全く宗教色が無い葬儀まで様々となりす。
近年は宗教に対する信仰心が薄くなった、決まった菩提寺が無い人が増えているなどの理由から、宗教的手続きを踏む葬儀よりも、宗教色が無く自由な内容にできる葬儀を選ぶ人が増えているようです。
今迄の葬儀の概念にこだわる必要が無く、故人や家族の希望に合う内容の葬儀にできるので、故人が生前に残していた葬儀についての意向や、故人の趣味嗜好などを葬儀に反映することが可能です。

例を挙げると、クラッシック音楽の生演奏がある「音楽葬」、ドラム・ベース・ギター等の演奏者を呼んで行う「ロック葬」、ホテルやレストランで行う「お別れの会」なども自由葬になります。
自由葬は決まった形式的なものが全く無い為、規模が大きくなれば何もない状態から葬儀内容や進行を決めていく必要があり、充実した葬儀にする為には遺族の発案と、依頼した葬儀社の自由葬の経験が必要です。

このように書くと宗教者を入れない・宗教色を排した自由葬を行うのはかなり難しく感じるかもしれませんが、極極普通の無宗教葬であれば普通の葬儀から宗教色を外すだけで簡単に成り立ちます。
一般葬、家族葬、一日葬などのよくある葬儀で設営される祭壇を、宗教宗派に則ったものではなく現代風のモダン祭壇にしたり、生花で飾り付ける花祭壇にするだけで自由葬(無宗教葬)の装飾にできます。
「無宗教の葬儀を挙げたい」と葬儀社に伝えるだけで、例えば一般葬から宗教色を抜いた形式などの自由葬を簡単に挙行できるのです。

自由葬の例を紹介します

自由葬(無宗教葬)は前提条件めいたものがあります。
菩提寺が無いか菩提寺の墓に入る予定が無く、宗教宗派不問の霊園などに自分の墓を作ってあるか、死後に遺族が(宗教宗派不問の)新しい墓を作る場合は、宗教者を呼ばない無宗教葬が可能です。

無宗教葬

無宗教葬と言っても様々ですが、大掛かりではなく一般的な内容にしないのであれば、先にも書いたような一般葬・家族葬・一日葬などのよくある葬儀から宗教者を差し引いた形式の自由葬がお勧めです。
この形式の多くは宗教者を呼ばず戒名の授与もありませんが、宗教色のある内容進行もできますし、宗教用の祭壇を使用せずに生花を使った花祭壇を使って宗教色の無い内容にもできます。
簡易にできる自由葬で故人の趣味を生かしたい場合などは、葬儀場内に作った思い出コーナーなどに故人の遺品や思い出の品を飾るような演出になるでしょう。
例えばゴルフ好きであったなら会場の一部や棺の近くなどにゴルフクラブを飾る、釣りが趣味であったのなら釣り竿を置いて故人が着ていた釣り用のジャケットなどを飾る、などができます。

少し大がかりな内容であれば、薔薇が好きだった故人に合わせて祭壇をたくさんの赤い薔薇の生花で飾るなどもできますし、バイク好きだった故人の為に斎場に許可を取ってバイクを搬入することもあるそうです。
ですが大量のバラの調達や斎場にバイク搬入の許可を取って実際にバイクの搬入をする場合など、実際には多少の調達日数や特別な許可が必要になります。

大掛かりに故人の意向や趣味などを生かしながらかなり凝った演出の自由葬にするには、かなり前からの準備が必要になることもあります。
例えば船が好きだった故人の為にヨットの形状をした棺にしたいなど、葬儀社がすぐに用意できる範囲を超えた装飾や祭壇などを希望するのであれば、場合によっては故人の他界前からの準備が必要です。

音楽葬

宗教者を呼ばず、故人が好きだった楽曲、故人の一番良かった時代に流れていた曲、故人の印象に近い曲などを流して行う葬儀形態です。
市販のCDやダウンロード音源、故人が生前に演奏していた曲をを音響機器を使って流す、クラッシック楽器の演者や合唱団などを手配してもらって生演奏、ロックバンドを呼んでの生演奏などもあります。
故人が好きだった曲などを流すことで、特定の宗教の束縛が無く、葬儀全体を生前の故人の印象で満たすことができ、参列者が忘れられなくなるような温かい葬儀になるでしょう。

注意点としては、音楽葬ができる会場の手配で、例えばクラッシック生演奏でもある程度の音量があり、隣の会場で行われている別家の葬儀の読経を妨害するようでは、音楽葬と言えどただの迷惑行為です。
斎場など会場を使う場合の音楽の使用は、音楽著作権の問題で使用料の支払いが生ずる場合もあるので、JASRSCと契約している葬儀社に依頼することが必要です。自宅葬であれば著作権問題は生じません。

ホテル葬

ホテル葬は、ホテル内の宴会場やホールなどで行う葬儀ですが、ホテルに遺体を持ち込むことはできないので、あらかじめ家族や遺族だけで直葬・密葬・家族葬などを行った後の遺骨を持ち込むことになります。
ホテルという華やかな雰囲気のある場所で故人を偲べますし、遠方からの参列者がいる場合は葬儀前にホテルに宿泊してもらうこともできる、という利点があります。
ただ、ホテルだけに遺体の制約の他に、会場に匂いが付くことを避けるために焼香ができない、防災上の都合で火を付ける蝋燭が使用できない、などの制約もあるので注意が必要です。

お別れの会(偲ぶ会)

お別れの会はホテルやレストランで行うことが多く、先に密葬や家族葬をしてお骨を持ち込むことからホテル葬とさほど変わりませんが、パーティー形式にすることが多いようです。
参列者からの香典は辞退する代わりに1万円から2万円の会費制にして、食事をしながら故人の思い出話をするような形式ですので、葬儀よりも肩の力が抜けたような雰囲気になります。
法人などが行うきっちりした葬儀としての社葬もお別れの会に含まれ、例えば先に社長(故人)の家族親族だけで密葬をして、後に取引先業や関係者、知人友人などを集めて挙行します。

生前葬

生前葬は存命中に本人の希望で挙行される葬儀なので、そもそも葬儀なのかという疑問はあるものの、多くは宗教者を呼ぶことが無く宗教的手続きも踏まないので、大まかに見れば自由葬に分類されるようです。
自分の心身が健康なうちに多くの人に感謝を伝えたいという趣旨のもと開催され、ホテルの宴会場などを借りてパーティー形式での挙行になり、故人(とは言え存命中)との歓談を中心に進行します。

逝去から火葬までの流れはこんな感じ

自由葬は内容の全てが自由ということもあり葬儀の流れ自体に決まりきった形式はありませんが、ある程度の参考になる自由葬の流れはありますので、ここで解説します。

01.逝去・搬送

病院で臨終を迎えると医師が死亡確認をして死亡診断書の用意を始め、看護師が遺体の死亡処置を行い、霊安室に移動します。
病院にもよりますが霊安室の利用は長くても3時間程度としているので、契約した葬儀社に直ちに連絡するか、故人の死亡後に葬儀社を探して遺体の搬送先を決めて搬送依頼をする必要があります。
この時に主だった親族などに、故人が他界したことを伝えておくと良いでしょう。

02.安置と葬儀社打ち合わせ

安置先は
・自宅
・斎場などの対面できる安置室
・葬儀社などの対面できない安置施設
のいずれかになるでしょう。

自宅安置または斎場などの対面できる安置室の場合は、布団の上に遺体を乗せて安置します。自由葬なので遺体の向きを北枕にしたり枕飾りをするなど、細かい宗教的作法をする必要はありません。
葬儀社との打ち合わせですが、まず宗教者を呼ばない自由葬を希望していることを伝えます。また、どのような内容の自由葬にしたいのかを伝えて、もし納得できないようであれば別の葬儀社に相談してみましょう。

03.納棺

通夜があるなら通夜日、通夜をしないのであれば告別式の日に行うのが納棺で、安置していた遺体を棺に移動します。この納棺時に副葬品を入れる場合と告別式終盤の出棺前に副葬品を入れる場合があるようです。

04.通夜・通夜振舞い

自由葬は宗教的なことをしないので通夜を省く場合もあるようです。自由葬で通夜を挙行する場合は葬儀社の司会者が式全体を仕切ってくれます。

通夜の流れの一例
1.入場・着席
2.開式の辞
3.故人の紹介
4.黙祷
5.献奏
6.感謝の言葉
7.献花
8.閉式の辞
9.通夜振舞い

このような感じで宗教色が無い進行内容です。これはあくまで一例なので、もっと自由な形式でも、あるいは宗教的な要素を含んだ形でも大丈夫です。
また通夜振舞いと言う食事会は、立席でビュッフェにしたり、故人が好きだった食べ物を出したりなど、様々です。

05.告別式

よく「葬儀・告別式」と書かれますが、自由葬の場合は宗教的儀式である葬儀は無く、社会的儀式である告別式のみを挙行します。
また、通夜を省略した場合は告別式の前に納棺を済ませます。告別式の進行役は葬儀社の司会です。

告別式の流れの一例
1.入場・着席
2.開式の辞
3.故人の紹介
4.黙祷
5.献奏
6.故人の動画上映
7.感謝の言葉
8.献花
9.弔電紹介
10.別れ花・副葬品
11.喪主または遺族代表の挨拶
12.閉式・出棺

この告別式の例もあくまで一例です。通夜同様にこの流れよりも自由な形式でも宗教色が入っても大丈夫です。

06.火葬・骨上げ

火葬場に遺族や参列者と棺が到着すると、10分程の最後のお別れの時間が持てるのですが、すぐ隣の炉で別の家族がお別れをしていることもあります。
この場合は他家への迷惑になることもあり、自由葬だからと言って音楽を流すなどの自由行動は禁止です。
棺が火葬炉に入ってから1~2時間で火葬が終了するので、それまでの間は火葬場内の控室で軽食などを取りながら待機します。

火葬終了の連絡を受け火葬炉の前に集合し、喪主から近い順番に遺骨を箸で拾いながら骨壺に納めていくのが骨上げです。
全ての遺骨が骨壺に納められると蓋をし、骨箱に入れて骨覆いをかぶせて骨上げの終了です。

自由葬の費用は内容次第?

よくある葬儀の費用は
・葬儀社に支払う費用
・一人当たりの返礼品と飲食費用×参列者の人数
・宗教者費用
の合計額になりますが、自由葬の場合は宗教者費用は不要です。

葬儀社のHPなどで家族葬や一日葬のパッケージプランが販売されていますが、自由葬プランはあまり見かけません。
むしろ無宗教葬・自由葬に適したパッケージとして、一般葬・家族葬・一日葬・火葬式のプランを推奨している葬儀社もあるので、よくある葬儀形式プランを宗教者を呼ばない形に変更するのが最適なのかもしれません。
よくある葬儀を無宗教形式に変えるだけであれば、葬儀社に支払う金額は、令和五年の時点で20万円から100万円(以上)になるのではないでしょうか。
ですが、かなり凝った内容や演出装飾にするのであれば、葬儀社に支払う金額は相当な金額になるでしょう。

自由葬ということもあり、香典を辞退すれば返礼品費は不要ですし、通夜と精進落としを省けば飲食費用は火葬場控室での軽食費だけです。
例えば通夜を挙行して通夜振舞いがある場合、故人が好きだった食べ物を取り寄せたりする方がよくある葬儀の通夜振舞いよりも高くつく場合も考えられるので、葬儀の内容次第になる部分が大きくなります。

まとめると自由葬にかかる費用は、一般葬・家族葬などの基本的な葬儀種と参列者の人数が関係しますが、さらに葬儀の内容や演出にこだわるほど高額になる可能性があります。

自由葬のメリット

宗教者を呼ばずに葬儀内容や演出を自由自在に設定できる自由葬の利点は、葬儀費用の節約ができたり故人を忘れられないような内容にできるなど、様々です。

故人の遺志を反映させることができる

今迄日常的に触れることが無かった宗教に則った葬儀で故人の個性が埋没してしまうのを嫌い、故人の生前の意思や趣味個性を生かした葬儀にしたい場合に自由葬は最適です。
故人の個性に溢れた葬儀は、故人の最後のお別れに来てくださった方々の心に響き、ずっと記憶に残り続けるような非常に印象深いものになるでしょう。

信仰が無い場合に適している

現代は無宗教であることが普通とも言えるので、他界したときだけ宗教的な儀礼をするというのも何か違うと感じる方は、葬儀社に相談して宗教者を呼ばない葬儀にするだけで自由葬にできます。

宗教宗派を選ばない霊園に墓がある

もし菩提寺があるのであれば、寺院に無断で無宗教葬をすると先祖代々の墓に納骨することを断られることが多々あります。
ですが菩提寺が無く宗教宗派自由な霊園に墓を持っているか、これから墓を作るというのであれば、無宗教葬の自由葬は挙行可能です。

宗教費用を節約できる

宗教を否定する訳では無いものの、葬儀の時だけお世話になるお坊さんの読経に20万~30万円、ありがたいのだろうけど漢字だらけで意味が理解しにくい戒名に10万~100万円以上と言う費用が理解できない人もいます。
であれば宗教者を呼ばない葬儀にすることで、読経料と戒名料の合計金額と言えるお布施を節約するこができます。

思い出深い葬儀にできる

通夜振舞いで出す料理は軽食や寿司が多いのですが、自由葬ならよくある食事を出すのではなく、故人が好きだった食べ物や故人が良く通っていた店の料理を出すことも可能です。
実際に小規模な葬儀で故人がよく通っていたラーメン店のラーメンを届けてもらって参列者全員で食べたという話や、会場内を通常の葬儀では使わない色合いの派手な花で満たしたという話もあります。
決まりきった形の無個性な葬儀で故人を送り出すより、このように挙行内容に個性とこだわりを持たせた自由葬で送り出した方が故人も喜び、参列者にも忘れられない葬儀になるのではないでしょうか。

自由葬のデメリット

自由葬の宗教的儀式が無いことや宗教者を呼ばないことが、思わぬ欠点になってしまうこともあります。

遺族親族参列者の理解を得にくい

自由で個性がある葬儀を良しとするのは葬儀社に自由葬を依頼した家族のみで、これまで通りに宗教者がいて宗教的儀式と手順を踏む葬儀に慣れた遺族親族や参列者からの理解が得られないこともあります。
特に内容に凝りすぎている自由葬は、例えば祭壇や棺をしめやかな式にそぐわない派手な花で囲うなど、どうしても自由葬を理解できない親族などから批判をされたり、式の見直しを迫られるかもしれません。

菩提寺の墓に入れない

自由葬と言うより無宗教葬で挙行すると、菩提寺から納骨を拒否されたり、通夜と葬儀告別式がありしっかり宗教的儀式を踏んだ葬儀のやり直しと、戒名の授与を求められることもあります。
また、自由葬後の菩提寺との関係が悪くなることもあります。
このようなことを避けるため、菩提寺がある場合でどうしても自由葬を行いたいのであれば、先に宗教的儀式を踏んだ家族葬や密葬などを行い、戒名を授けてもらった上で後日自由葬を行うのが良いでしょう。

葬儀場で音楽を流せない場合がある

著作権で音楽を使えない場合について先に触れましたが、葬儀社が音楽の利用主体であると営利団体による音楽使用と判断されて著作権に触れる為、葬儀社とJASRACとの包括契約が必要になります。
ネットやCDなどの音源からで音楽を流しても、人力で演奏しても、楽曲の使用料の支払い義務が生じるのです。
斎場などで音楽を流す際はJASRACと契約を締結している葬儀社を利用するか、著作権が存在しない音楽素材を探す必要があります。
余談ですが、自宅で葬儀をする場合は喪主(一個人)が曲の利用主体なので営利団体とは判断されず、問題無く音楽を流せるそうです。

意外に葬儀費用が高くなることも

故人の映像制作を依頼する、通常の葬儀には無い華やかな装飾をする、特注の棺を発注する、プロの演奏家や歌手を呼ぶ、こだわりのある食事を提供する、などの演出にこだわると葬儀費用が高騰します。
宗教者を呼ばない自由葬ならお布施の費用を節約できるはずが、内容に凝りすぎて想像より高額になることもあり得るのです。

自由なだけに企画が難しい

よくある葬儀を無宗教形式に切り替えた無宗教葬であれば、多くの葬儀社で挙行ができます。
ですが凝った内容の自由葬にする場合は、演出の自由度が大きいだけに、どのような葬儀にしたいのか明確な目標が無く特別なこだわりも無いのであれば、自由葬の企画は非常に難しくなります。
さらに言えば葬儀社の(凝った)自由葬の経験と企画力、自由葬に対する技量のようなものも必要になりますし、内容の濃い自由葬にするのであればそれなりの企画日数や発注日数も必要です。
参列者に「内容が薄くて何をやりたいのかわからない、理解のできない葬儀だった」と思われないようにしなければならない難しさがあります。

まとめ

自由葬は宗教者を呼ばずに挙行しますが、葬儀の内容は宗教色があるものから全く宗教色が無い形式まで様々な内容にでき、さらには自由度を生かして今迄の葬儀では全く考えられなかった演出をすることも可能です。
派手な内容にしないのであれば、よく行われている家族葬や一日葬から宗教者を省くだけで、無宗教葬と言う自由葬を行えることもあり、意外に気軽に挙行できる葬儀でもあります。
宗教者が不在なのでお布施などの宗教費用節約できる反面、菩提寺に断りなく自由葬を挙行すると代々の墓に入れてもらえないことや、自由葬自体が遺族や参列者の理解を得られないこともあります。
このようなデメリットを回避しつつ菩提寺や参列者の理解を得るのであれば、先に家族葬や密葬を行ってから自由葬を挙行するか、自由葬をあきらめるのどちらかを選ぶしかありません。
また内容を凝らした自由葬にする場合、遺族の明確な目的や葬儀社の企画力に葬儀内容が左右されることもありますが、しっかり内容を組み立てることができれば、遺族にも参列者にも忘れられない葬儀になるでしょう。