一日葬とは通夜が無く一日で全てを行う葬儀形式
一般的な葬儀は
・一日目に通夜
・二日目に葬儀・告別式と火葬
を行う、言わば「二日葬」がほとんどでしょう。
このようなよくある二日葬に対して
・通夜は挙行しない
・納棺に始まり、葬儀告別式と火葬を一日で執り行う
これが一日葬です。
つまり、通夜を省くことで一般的な葬儀よりも日数と時間を短縮した葬儀が一日葬です。
簡略化した葬儀ですが、基本的な流れは通夜が無いこと以外は一般的な葬儀と同様で、搬送・安置→ 納棺(通夜省略)→ 葬儀・告別式→ 火葬・骨上げ→ 精進落とし、という流れになります。
最近の一日葬は最後の精進落としという食事会も無しで、骨上げ後すぐに散会することも多くなったようです。
・費用などの面から簡素な葬儀にしたい
・高齢や病気の遺族が多いため時間を短縮したい
・遠方からの参列者が日帰りできるようにしたい
など、一日葬はこのような希望がある場合に適した葬儀です。
一日葬の費用
様々な葬儀社が一日葬のパッケージプランを販売していますが、令和五年の時点で安ければ30万円前後で、高級なパッケージブランになると70万円以上になるようです。
ただし、このパッケージプランは「会食費・返礼品費」寺院などに支払う「お布施」を含まない金額であることを覚えておきましょう。
精進落としをする場合は格上の懐石料理などを出しますので、一人当たり単価が4,000円~5,000円程度にはなるでしょう。
また、読経料と戒名料を合わせたお布施は、読経料については地域差があり、戒名料については戒名の位によって10万円~100万円以上などの金額変動があると言われています。
一日葬の流れ
従来の葬儀には見られなかった形式で行われる一日葬ですが、よくある葬儀と大幅に違う点は通夜が無いので葬儀告別式の直前に納棺が行われることです。
その他の宗教的儀式や必要な作業は一般的な葬儀と変わりがありません。
01.臨終と搬送
例えば病院で死亡した場合は医師による死亡宣告があり、遺体は死亡処置がされた後に霊安室に移されます。このとき並行して死亡診断書が作成されます。
病院の霊安室の使用は2~3時間までなど使用時間の上限がある場合が多いので、早急に遺体を搬送する必要があります。
タクシーや介護車での遺体の搬送は法律違反なので現実的な搬送方法としては葬儀社の緑ナンバーの搬送車が最適です。
故人の臨終前から葬儀社と契約していることはあまり無いので、病院から紹介された葬儀社または臨終直後にネットなどで調べた葬儀社に依頼することになるでしょう。
葬儀社は24時間365日受け付けているので、深夜早朝の他界で電話をするには非常識とされる時間であっても、遺体の搬送を受け付けてくれます。
遺族の自家用車での搬送は違法にはならないのですが、死亡処置がされている遺体とは言えいろいろな穴から様々な物が出てくる可能性があるのでお勧めできません。
遺体の搬送先は
1.自宅
2.葬儀社の安置室
3.斎場の安置室
のいずれかから選ぶことになります。
02喪主の決定
葬儀の打ち合わせの前に、葬儀の主催者で葬儀社や僧侶との連絡役である喪主を決めなければなりません。
故人による喪主の指定がある場合はできる限り従うとして、故人が指定した人物が喪主になることができない場合は
1.故人の配偶者
2.故人の直系の男性または女性(息子または娘)
3.故人の親
4.故人の兄弟姉妹
のような順番で指名すると選びやすくなるでしょう。
また、喪主は必ず引き受けなければいけないものではなく、故人や遺族親族との今迄や今後の関係、健康状態や故人が他界したことによる精神状態などを理由として、辞退することも選べます。
03.安置と枕飾り
搬送した遺体は故人の死亡後24時間は法律により火葬ができないことや、慣例として友引の日は葬儀を行わないこと、斎場や火葬場の混雑状況などから最低でも1日以上の安置が必要です。
また、故人の供養の為に家族と共に過ごすという意味もあるので、葬儀日まで布団に寝かせて安置します。
枕飾りは故人の供養の為の仮祭壇で、遺体の枕元または遺体の側に置かれる白木の机とその上に置く枕団子や線香など一式をまとめた総称です。
よく考えれば、最終的に遺体は斎場に移動するのだから、病院から搬送した遺体は最初から斎場に置けばいいのではないかという意見も出そうですが、それでは合理的過ぎてしまいます。
安置は斎場内の会場に祭壇などを運び入れて飾り付けたり、席の準備をするのにも時間が必要なので、その間に自宅などで遺体を待機させる意味もあるのです。
04.打ち合わせと連絡
菩提寺がある場合は。寺院に通夜無しの葬儀を一日で行うことを望んでいる旨を伝える必要があります。
仏式の葬儀は通夜を含む二日葬であることが必要とされているので、一日葬に理解のある寺院はあるものの、葬儀に通夜は必要と考えている寺院はまだあります。
菩提寺の理解が得られた、または菩提寺が無い場合は、葬儀社に通夜をやらない(精進落としも割愛する)旨ををまず伝えておきましょう。葬儀社は一日葬プランを提示してくれるでしょう。
故人が他界してから2日~4・5日には葬儀をする為、比較的短い時間で、捻出できる費用を考えながら葬儀の打ち合わせする必要があり、結構忙しくなります。
葬儀の内容に納得できて葬儀社との契約ができたら、担当者に死亡診断書を預けて死亡届と火葬許可証の手続代行を依頼します。
斎場と火葬場は葬儀社が予約代行をしてくれるので、契約が終了次第、訃報・葬儀の日程・場所、を参列に招きたい人たちに連絡しましょう。
一日葬の参列者の範囲に制限は無いので遺族親族の他に一般の参列者を呼んでも大丈夫ですが、多数の参列者を呼ぶと葬儀費用が高騰するので一日葬で葬儀費用を抑える意味が無くなってしまいます。
そこで
1.一日葬に参列してもらう人
2.後の親戚付き合いなどを考えて、訃報だけを知らせて葬儀の日時は教えない人
3.後日に訃報だけを知らせる人
に分けておくと良いでしょう。
葬儀の時間を短縮することが目的で、参列者を絞ることが目的ではない場合はこの限りではありません。
ここまでが。葬儀前日までに行う儀式や必要事項になります。
05.納棺と副葬品
一日葬は、一日で納棺→ 葬儀→ 告別式→ 火葬→ 骨上げ→ (精進落とし)までの全てを行います。
納棺は基本的には遺族が執り行う儀式で、末期(まつご)の水→ 湯灌→ 死化粧→ 死装束と進み、最後に棺に納めますが、納棺の儀式全てを葬儀社に任せることもあります。
一日葬の場合の納棺は午前中か昼頃までに開始します。
遺体を棺に納めるとき、故人の頭・胴体・足等を持ち、慎重に棺の中に納めます。葬儀社が遺体を棺に納める場合は、故人の供養となるよう、遺族が故人に手を添えるようにしましょう。
納棺は、遺体を清めてあの世への旅立つ支度を行うという意味もあるので、副葬品として、思い出の品や死後の世界で過ごすための品を棺に納めます。
副葬品は、遺族の希望する物や故人の愛用品を納めるのですが、棺に入れられるのは「燃やせる物」という規則があります。
細かく言うと「燃やしても良い物」になるのですが、故人の服や着物、遺族からの花や手紙、思い出の写真などは大丈夫で、ゴルフクラブ、腕時計、入れ歯、缶や瓶などはダメです。
スイカやメロンなどの果物は燃やしても良い物に思えますが、大量の水分を含む為に火葬炉の中で破裂して遺骨が損傷する恐れがあるので、実際には副葬品にできません。
06.葬儀と告別式
実際に葬儀に参列すると「葬儀・告別式」と表示されていて、何が葬儀でどこからが告別式なのかわからないことも多いのですが
「葬儀」は、僧侶の作法に則った、故人を送り出すための宗教的な儀式
「告別式」は、喪主が中心に行う、故人に別れを告げるための社会的な儀式
という区別があります。
多くの葬儀・告別式は
1.受付
2.遺族・親族着席
【葬儀開始】
3.僧侶入場・開式
4.読経・引導
5.弔電
6.焼香(遺族・親族)
【葬儀終了・告別式開始】
7.焼香(弔問客)
8.僧侶退場
9.喪主挨拶
10.閉式
【告別式終了】
このような流れです。
最近はこの一連の流れ全体を告別式とする葬儀もあります。
また、上記では告別式の開始を遺族親族の焼香の後としていますが、僧侶退場の後を告別式の開始とすることもあり、その場合は弔電を喪主挨拶の前に設定するようです。
07.別れ花と出棺
告別式が終わると祭壇に置かれていた棺は葬儀会場の中央付近に移されて蓋が開けられるので、喪主から遺族親族、一般参列者の順で生花を棺に入れていきます。これが「別れ花」です。
この時に副葬品を入れる場合もあります。
別れ花が終わると棺の蓋が閉められて「釘打ち」をするのですが、釘打ちをしない葬儀も増えているそうです。
次が「出棺」で、棺を霊柩車に乗せる為持ち上げて運ぶのですが、棺は重いので男性6人または男性8人で持ち上げるのが良いでしょう。
故人が家に戻らないようにという意味もあり、遺体の足側を先頭に霊柩車まで運びます。このとき喪主が位牌を持ち、遺影写真を遺族が持ちます。
霊柩車には喪主が乗り、ハイヤーに遺族と僧侶、マイクロバスに他の遺族親族や一般の参列者を乗せて、霊柩車がクラクションを一回鳴らしてから火葬場に出発します。
08.火葬と骨上げ
火葬場に到着すると火葬炉前に棺と焼香台が置かれて僧侶の読経と共に喪主から焼香をしていくのが「納めの儀」です。
納の儀が終わると火葬炉に棺が入れられるので、控室に移動して火葬が終わるまでの1~2時間を歓談しながら過ごします。
多くの火葬場では飲食物の持ち込みが許可されていますので、お茶菓子や軽食などを食べながら故人の話などをして歓談します。
「骨上げ」は火葬後の遺骨の周りに集まり、二人一組になって一つの遺骨を二つの竹箸で拾いながら骨壺に納めていきます。
これも拾い上げる順番的には喪主が一番最初で、縁の深い順に遺族親族、一般参列者となり、全ての遺骨を骨壺に納めて蓋を閉めると、骨壺は白木の箱に入れて白い布で覆って骨上げが終わります。
骨上げが終わると、斎場に戻って散会または初七日法要と精進落としを行います。
09.初七日法要と精進落とし
初七日法要は
・骨上げ後に斎場に戻ってから行う「繰り上げ初七日法要」
・葬儀・告別式の直後に行う「繰り込み初七日法要」
・命日を含めた七日後に再び遺族親族が集まって行う「(本来の)初七日法要」
の三種類があります。
現代の葬儀や供養は多くの宗教的儀式を短い時間の中に詰め込むので、繰り上げ初七日か繰り込み初七日をすることが多いようです。
元々の精進落としは四十九日の忌明けの料理でしたが、今は初七日法要を終えた後に参列者に対する感謝の気持ちの表れとして行う食事会になりました。
遺族が感謝を込めてもてなす意味があるので精進落としの席次は、僧侶が最上の上座になり次いで一般参列者と続いて、下座側が遺族が座り、喪主は入口に一番近い下座に着席します。
一日葬のメリット
一般的に葬儀は二日掛かりですが、通夜を省略するとで通夜日がなくなり、葬儀全体を一日で済ませることは時間の大幅な節約になり、遺族親族の体力的精神的な負担が減ります。
葬儀が一日だけで済むので遠方からの参列でも宿泊する必要が無く、参列者の費用負担を減らすことができ、仕事がある場合でも一日休むだけなら比較的参列の都合が付きやすくなります。
通夜が無いことで通夜に関わる費用と通夜振舞いの費用が節約でき、二日葬と比較して葬儀費用が安くなりますが、参列者を近い身内に絞ればさらに葬儀費用を節約できます。
一日葬のデメリット
参列者を少人数に絞った場合は、葬儀は大人数で送り出すものという考えを持つ人から反対されることと、葬儀に呼ばなかった人が後日弔問に訪れた場合のの対応や接待が必要になることです。
通夜をしないことに身内などから理解を得られなかったり苦情などを言われることがあるかもしれません。
寺院によっては通夜を省略した葬儀に理解が得られないことが考えられますので、菩提寺がある場合は通夜がある一般的な葬儀にせざるを得ないこともあるでしょう。
一日葬のまとめ
一日葬は通夜を省略し、葬儀・告別式と火葬を一日で執り行う新しい葬儀形態です。
通夜が無い最近流行りだした新しい形の葬儀ということもあり、宗教的な意味や葬儀の手順を重んじる寺院や親類などから、思わぬ反対に遭うことも考えられます。
ですが遺族親族が一堂に集まるのは葬儀の日だけで良い、遠方からの参列でも宿泊せずに全ての葬儀手順を終えることができる、葬儀の時間・日数と費用も節約できるという利点もあります。
葬儀が一日で済むということは高齢者や持病がある人なども参列しやすい葬儀でもあるので、良し悪しを十分に考えて一日葬にするか一般的な葬儀にするかを判断すべきでしょう。